先頃『小説「聖書」』CW・ワンゲリン著徳間書店刊)が出版され反響を呼んでいるようだが、純国産の聖書の入門書と言えばやはり本書であろう。
《福音》恵みのおとずれ 1998年12月号
副題に「心の糧(かて)を求める人ヘ」とある。「聖書を読んでみよう」と言う動機は実に様々だ。
「哲学のレポートを書くために」とか「西洋文学のバックボーンを探るため」等。だが三浦氏はどうもそのような知的好奇心を満足させるためだけにこの本を書いたのではないようだ。寧(むし)ろ心の糧を求めて、『聖書』という古典に行き着いた人々に、その内容を氏の独自の観察眼で解説をしているのである。
格好の例として盲人のいやしの記事(ヨハネの福音書9章)がある。解説の中で氏は、自らの闘病中の体験を語っている。氏の病室にある宗教の布教師がやって来て「あなたの病気は神様の罰、天罰だ」と言ったという話だ。
氏はこの言葉とキリス卜の弟子たちの言葉、「この人が生まれつき盲人なのは、だれが罪を犯したためですか?」の間には「因果応報」の思想があることを喝破し、この「因果応報」の思想は、苦難の只中にいる人をますます苦しめるのだということを教えている。それだけではない。彼らに必要な心の糧は、あのキリストの言葉「本人が罪を犯したのでもなく、また、その両親が犯したのでもない。ただ神のみわざが、彼の上に現れるためである。」であるということを示してくれるのだ。
「人の生くるはパンのみに由るにあらず、」
心の糧を求めている人、人生の指針を求めている人に是非お勧めしたい一冊である。
苫小牧・山手町神召教会牧師(現・山手町教会)
大坂克典(召天)