vol.26- column『はじめてのお引っ越し』

《福音》恵みのおとずれ 1998年8月号

今年の春、みーちゃん(我が家の愛猫)は生まれて初めての引っ越しを経験しました。自然いっぱいの長野から、「150万人都市の」神戸の街へ。たんぼの中を走り回っていたみーちゃんにとって、この引っ越しは、ちょっとしたパニックを引き起こしたようです。

 引っ越し前夜、忘れられないことがありました。翌日すぐに荷物出しができるようにと、2階の私の部屋の中の物を全部片付けて、階下に運び下ろし、その後1階を片付けていたのですが、そういえば、みーちゃんが見当りません。いつもいるはずの2階の部屋は空っぽで、どこにも気配はありません。へたに出掛けて、帰ってこないなんてことになると、連れて行けなくなるし、困ったなあ、なんて考えながら、探し回っていると…いたんです、段ボールだらけの真っ暗な荷物部屋の中に。

 山のように積み重ねられた段ボールの上に、彼女のお気に入りのクッションが乗せてあって、その上にちょこんと丸くなって、スースーと寝息をたてていたんです。私は思わず、その安心しきった姿を見て、微笑んでしまいました。

 タンスやベッドばかりか、カーテンやカーペットまでなくなってしまった私の部屋は、同じ部屋ではあっても、みーちゃんにとっては馴染のない場所だったんでしょうね。家の中の様子が全て変わってしまって、あの真っ暗な荷物部屋の、山と積まれた段ボールの上のクッションだけが、彼女にとって唯一変わらない、安心できる場所だったんです。

 

神はわれらの避(さ)け所、また力。
苦しむとき、そこにある助け。
それゆえ、われらは恐れない。
たとい、地は変わり山々が海のまなかに移ろうとも。

聖書


あなたの人生には、何が起こっても変わることのない「避け所」がおありでしょうか。
そこに行きさえすれば安心することのできる、そんな場所をお持ちでしょうか。

(文・細川 るり[旧姓:山本])