《福音》恵みのおとずれ 2001年 11月号
私の住んでいるところは鎌倉の大船です。ついこの間まで、山田洋次監督の寅さんシリーズがよく撮られた松竹撮影所が近くにありました。ある時、撮影の合間にレストランで食事中の寅さんこと渥美清さんに偶然会ったことがあります。その時、少しお話しすることができ、寅さんの一ファンとして、正直うれしかったですね。
「男はつらいよ」第46作目にあたる「寅治郎の縁談」の中で、「おじさんにどんな魅力があるんですか」と甥の満男にきかれたマドンナ役の女性がこう答える場面があります。
「そうねぇ、温かいの。それも電気ストーブのような暖かさじゃのうて、ほら、寒い冬の日、お母さんがかじかんだ手をじっと握ってくれた時のような、からだの芯から温まるような温かさなの」
このセリフを耳にしたとたん、突飛に感じられるでしょうが、私はイエス様の手の温もりを思いださずにはおられませんでした。
いつもクリスマスが近づくと、胸が熱くなります。それは、クリスマス直前の日曜日に教会で生まれて初めて神様の愛にふれ、イエス様の温かい手に包まれている自分を知ったからです。21歳の時でした。それからもう40年以上になりますが、その時の喜びと安心感はますます深くなって、今の私の生きる支えと力になっています。
イエス・キリストは過去の人ではありません。いつも温かい愛の手を私に置いて、からだの芯まで温かくしてくれる現在の人です。
「わたしがきたのは、羊に命を得させ、豊かに得させるためである。わたしはよい羊飼である。よい羊飼は、羊のために命を捨てる。」
これは新約聖書のヨハネによる福音書10章10節、11節にあるイエス・キリストの言葉です。
ここにクリスマスのメッセージがあります。イエス・キリストは天と地を造られた神のもとから、私たちに豊かな命を与えるために、人となって来られた神のみ子です。新しい、あふれる命を注ぎこむため、私たちを古い罪と死の生活から解放してくれる救い主、また祝福された人生への導き手です。
私の知っているある病院の先生は、秋から冬にかけて、白衣の右のポケットに懐炉をしのばせ、じっと手を温め、その手で患者さんの手の脈をとります。患者さんは先生の温かい手に気持ちがおちつき、「たとえ自分が肺ガンと言われても、この先生に命を託そう」と思うそうです。
イエス様は私たちの弱いところ、病んで傷ついている心とからだに温かい愛の手を置き、いやしてくれます。恐れと不安で前に進めない時、力強い手をもって励まし導いてくれます。21世紀最初のクリスマスに、私たちを変えるいやしの手から、あなたも温かいヒーリング・タッチを受けてみませんか。
文・菊山 和夫