スッキリわかる教理の歴史ガイド②

学生と先生の対話でわかりやすい ♪

創造の教理をめぐって

学生

今回はで最初に教理史で大論争になったテーマ、「天地の創造者である神さま」についてだ。

先生、神さまが全世界を創造されたことは、聖書にはっきりと書いでありますよ。それでも大論争だったんですか?

先生)そうなんだよ。この教理も信仰の先輩たちの努力によって守られてきたものなんだ。

2008年2月1日発行 通巻629号

執筆者 
野口 一郎(大津キリスト教会牧師)

-グノーシス主義の脅威-

先生

 教理史の初期に登場するものにグノーシス主義がある。これは教祖がいるわけでもなく信奉者の文書もわずかしか残っていないので、その起源を含めて未だにわからないことも多い。しかし、当時の思想や宗教などに大きな影響を与えたことは確かだ。

 グノーシス主義の教えは、知識(ギリシャ語で「グノーシス」)を得ることによって人間と宇宙全体が救われるということだ。キリスト教との関連で特徴をあげてみると、

  • 第一に、物質的なこの世界は悪であり、善である神さまはこの世界を創造しなかったと主張する点がある。世界を創造したのはデミウルゴスという他の悪い神さまであり、この神さまはしばしば旧約聖書の神様と同一視される。この教えは「悪がなぜ存在するのか」という難しい問題を解決しようとしたのだが、その結果、旧約聖書を否定して新約聖書と切り離すことになってしまった。マルキオンという人物は、実際にグノーシス主義者であったかどうかは別として、この異端的教えを強力に主張した。
  • 第二の特徴は、善と悪という極端な二元論を信じて、ただ一人の神様がご計画をもってすべてを治めておられるという信仰を否定したことだ。
  • もう一つ大事なことは、善である神さまが悪である肉体をとるはずがないのだから、人としてキリストがこの世に来られたこと、十字架にかかったこと、復活したことを全く否定してしまったことだ。クリスマスも十字架もイースターもないわけだ。キリストは肉体を持っていたように見えただけだという説(「仮現論」と呼ばれる)も出て来た。イエス・キリストという方が救い主であると信じるより、キリストが与えてくれた知識が救ってくれると信じた教えになっていたのだ。
学生

 神さまの天地創造を否定することで、福音の本質が否定されてしまったわけですね。

-教父たちの戦い-

先生

 すでに新約聖書の中にはグノーシス主義に反対して書かれた箇所が見られる。それを引き継いでグノーシス主義と戦ったのが「教父」と呼ばれる教会の指導者たちだ。二世紀には何人もの教父が書物の中でグノーシス主義に厳しく反論している。

 エイレナイオスという教父は、二元論を拒絶して、神さまは無からすべてを創造され、この世界は本来良いものであることを主張した。
 テルトリアヌスという教父は、マルキオンに反対して旧約聖書と新約聖書の統一性を主張した。オリゲネスはグノーシス主義に対抗して聖書を解説する注解書を本格的に初めて記した。

学生

 教父たちの努力がなかったら、キリスト教は全く違うものになったかもしれませんね。

先生

 スピリチュアル・カウンセラーが登場するテレビ番組など最近のニューエイジ運動の流行にグノーシス主義の影響を見る人もいる。私たちは現代社会の中でも正しい教理を信じて伝えていく戦いを続けていく責任があると言えるだろう。