《福音》恵みのおとずれ 1997年 8月号

 2年前に一つのTVアニメが話題になったことがあった。「アルプスの少女ハイジ」などを放映したアニメ名作劇場シリーズの中の一作で「フランダースの犬」がそれである。

 原作はウィーダで19世紀のベルギー、フランダース地方である。おじいさんと牛乳運びで生計を立てる少年ネロと愛犬パトラッシュが、貧しいながらも幸せに暮らす物語のアニメーションで、放送当時平均視聴率25%を維持し、最終回ではなんと30%を記録、日本中を感動の渦に巻き込んだ。テレビ局には「ネロとパトラッシュを死なせないで!」と投書が殺到するなどのエピソードが残っている。物語の最後は、ネロとパトラッシュがアントワープの教会の中に飾ってあるルーベンスの絵の前で凍えて死んでしまうのである。そのためあまりにもかわいそうだということで「死なせないで」という投書のかたちになって現れた。テレビ局は戸惑い、当のベルギーはこの反響に驚き、日本人観光客のためにネロとパトラッシュの銅像を建てたほどである。ベルギーでは普通の童話として読まれ、決して悲しい物語ではないのである。

アントワープ聖母大聖堂にある画家ルーベンスの絵画「キリスト昇架」

「わたし(イエス・キリスト)は、よみがえりです。いのちです。わたしを信じる者は、死んでも生きるのです。」
(ヨハネ 11章25節)

 この聖書のお言葉は死は決して終わりではないことを言っています。イエス・キリストは罪深い私たち人間を救うために、人間の身代りとなって様からの刑罰を受けて下さいました。このイエス・キリストを自分の身代りになって下さった救い主と信じるならば、その人はその信じる心によって罪が赦されて、死んでも神様の元へとあげられ、神様と共に永遠に生きるという約束なのです。

 「フランダースの犬」の原作者ウィーダは、悲しい救いのないアンハッピーエンドの童話を書いたのではなく、本当の意味での幸せ、ハッピーエンドを描いたのです。

 この物語の最後はこう書かれています。

 「そら、あそこへ-天国へいけば、イエスさまのお顔がみられるよ、イエスさまはけっしてぼくたちをはなればなれにはなさらないだろうよ。」(「フランダースの犬」より・講談社)

文・吉田 敦