《福音》恵みのおとずれ 1997年 4月号

 春。新しいことが始まる希望の季節です。また春は出逢いの季節でもありますね。「人生は出逢いで決まる」などという言葉もあるくらい、出逢いは時に人生を大きく変えるきっかけになることがあります。

 聖書に、ザアカイという人が出て来ます。彼は、当時ユダヤを支配していた敵国ローマに仕え、その税金を取り立てる役人でした。財産も地位も手に入れながら、背が低いという劣等感に悩み、また不正な取り立てをしていたために人々から嫌われる孤独な人生を送っていました。彼の中には、自分の力では埋めることのできない虚(むな)しさがあったのです。

ある日、イエス様がその町を通られることになりました。ザアカイはイエス様をひと目見たいと思いましたが、群衆にさえぎられて見ることができません。ですが、彼はあきらめませんでした。走って行って、いちじく桑の木に登り、イエス様を待ちました。彼はイエス様に出逢うことを熱心に願い求めたのです。

そこを通りかかったイエス様は、誰からも嫌われていた孤独なザアカイに声をかけました。

「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日はぜひあなたの家に泊まりたい。」

このイエス様の言葉は、かたくなな、そして傷ついていたザアカイの心を溶かしました。イエス様との出逢いは、ザアカイを罪から救い、劣等感から解放し、積極的に愛を与える者へと変えたのです。虚しかった彼の心は喜びに満たされました。イエス様との出逢いによって、彼はまさに新しい人生をスタートさせることができたのです。

 イエス様は私たちにも呼びかけて下さっています。イエス様は、私たちを新しく生まれ変わらせるために十字架にかかって下さいました。私たちがイエス様に近づき、呼びかけに応えるなら、私たちも喜びに満ち、生き生きとした、新しい人生をスタートさせることができるのです。
 この春、あなたもイエス様と出逢い、新しい人生の第一歩を踏み出すことができますよう、心からお祈りしています。

 「きょう、救いがこの家に来ました。…人の子(イエス・キリスト)は失われた人を捜して救うために来たのです。」

 聖書  ルカの福音書 19章9節

文・片平 勝