学生と先生の対話でわかりやすい ♪

古代からその先ヘ-アウグスティヌスの貢献

-西洋古代教会最大の教父-

先生

最初に質問しよう。キリスト教会を大きく三つに分けるとどうなるかな。

学生

正教会(東方教会)とカトリック教会とプロテスタント教会ですね。

先生

正解だ。カトリックとプロテスタントはともに西方教会の流れにある。この西方教会の教理に格別大きな影響を与えたのが4~5世紀に北アフリカで活躍したアウグスティヌスだ。

2008年6月1日発行 通巻633号

執筆者 
野口 一郎(大津キリスト教会牧師)
アウグスティヌス

ドナティスト論争・教会について

先生

 アウグスティヌスの貢献として三位一体の教えがあげられる。
さらに、論争を通して彼は重要な業績を残した。ドナティストとの論争だ。
「迫害下で背教した聖職者によるサクラメント(洗礼や聖餐など秘跡と呼ばれるもの)は無効である。教会の根拠はそのメンバーの聖さと純粋さにある。」
彼らはこう言って自分たちこそ真の教会だと分派を作っていた。

 これに対してアウグスティヌスは、教会は聖徒だけの純粋な集まりではなく、イエスさまのたとえのように麦と毒麦が混ざっているところであること、それでも教会を教会とするのはキリストがして下さったわざであり神の恵みであることを主張した。

これは教会とは何かということを明らかにした最初の論争だったんだ。

ペラギウス論争・人間の性質について

先生

もう一つの重要な論争はペラギウス主義とのものだ。

学生

人間の自由意志を強調した教えですね。

先生

 もともと教父たちは、当時のギリシャ思想やグノーシス主義の運命論に対抗して人間の自由意志を強調していた。人間に罪の責任があることを示すためだ。

5世紀に入ってローマ帝国が弱体化し社会に不安が増大するなか、真に道徳的生活を送ることで世界を変革しようとする人々がいた。ペラギウスもその一人だった。
「神は人が行なうことができることを命じられた。」と言って、彼は人間の本性は善であり、神の特別な恵みがなくても人は善を選ぶ意志があり、律法に従う罪のない生活を送ることができる、アダムの罪は悪い模範になっているだけで、キリストも私たちの模範という意味で救い主であると教えた。結果的に聖霊の働きを語ることはほとんどなかったわけだ。

学生

アウグスティヌスは神の恵みを強調したんですね

先生

 彼は自分の回心体験のことも含め、現実の人間は罪深いものであることを聖書から理解していた。人間の意志は自らの力では善を選ぶことができず、ただ神の恵みによって救われ変えられていく、信仰そのものが神からの賜物であると教えた。

 両者の中間をとろうとするセミ・ペラギウス主義も現れ、完全に解決したわけではないが431年エペソ公会議でペラギウス主義は異端とされた。

「恩恵博士」と呼ばれる

先生

 アウグスティヌスは、ドナティストもペラギウス主義も人間の罪の性質に対する認識が甘く、人への過度の信頼があることを見抜いていた。そして神の恵みこそ信頼すべきものであることを強調した。

パウロ以来約400年間、ほとんど顧みられなかった恵みの教えに取り組んだ彼の功績は大きい。彼がいなかったら私たちが信じている教理も随分変わっていただろう。
彼は「恩恵博士」と呼ばれたそうだ。

 今回のテーマは、宗教改革の信仰義認、予定の教え、教会の教理と強く結びついている。
また取り上げることにしよう。