三浦綾子作品と信仰
三浦綾子記念館特別研究員の森下辰衛先生に、三浦綾子の作品を通して信仰を語っていただいています。
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(12)
『銃口』は、治安維持法下(ちあんいじほうか)で起きた北海道綴方(つづりかた)教育連盟事件と戦争を主題とし、国家権力と庶民(しょみん)の相克(そうこく)、人間として生きることの困難さと貴(とうと)さを描いた三浦文学の集大成である。
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(11)
三浦綾子は『愛の鬼才』執筆中に直腸癌の手術を受けたが、それから2年後、直腸癌再発時に書かれたのが『ちいろば先生物語』である。…神に信頼し神に従って生きるところには、次元の違うダイナミックな生き方があることを学び直すことであった。
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(10)
…かつて病床洗礼のとき、「どうぞこの堀田綾子姉妹を、この場において証しのためにお用いください」と溢(あふ)れる涙と共に祈ってくれた西村久蔵という原点に戻って、、「先生をして斯(か)く生かしめたキリストを」確かめたかったのだ。
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(8)
『続氷点』は同連載終結から4年半後に連載がスター卜した。『氷点』の陽子の遺書に書かれた”ゆるし” 。人はいかにして人をゆるし、また自らの罪をゆるされることができるのかという問題がテーマである。
陽子は3日間の昏睡(こんすい)から目覚めたとき、殺人犯の子ではなかった代わりに、不義の子という重荷を負わされる。
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(7)
『ひつじが丘』には秘密の中心が二つある。その二つの中心は物語の中で最も秘められた部分でありながら、物語を生み出す源泉となっている。
一つは主人公 広野奈緒実の父 耕介が妻の妹と過失を犯した時に、妻 愛子がそれをゆるしたことである。
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(6)
構想の中核はピエタの絵だった。三浦綾子はイエスの遺体を抱くマリアの絵に息子多喜二の遺体を抱く母セキを重ねた。癒えることのない痛みと悲しみの中で、・・・
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(5)
『三浦綾子の文学の根源は人間が人間として人間らしく生きられるようにという祈りである。しかしそれを阻(はば)むものが二つあると綾子は考えた。一つは罪でもう一つは苦難。苦難の時に人は、人生に与えられた良き物を奪われて打ちのめされ、生きる気力を失い、…
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(3)
人は時に「もう愛さない」という道を選ぶことがある。『氷点』冒頭、若い男との時間を楽しんでいたかった辻口夏枝は、母として子を愛するという使命を捨て、3 歳の娘ルリ子を外へ出した。ルリ子はその日殺される。誰かが「もう愛さない」という道を選ぶとき、愛に裏切られた者は淋さびしさという魔物に殺されるのだ。
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(2)
1948年12月27日、旭川市十条11丁目にあった結核療養所白雲荘に入所していた綾子を一人の青年が訪ねて来た。前川 正28歳。17年前1年間隣に住んでいた幼馴染でクリスチヤン。前川は…
三浦綾子の作品から学ぶ信仰(1)
三浦文学の最大の特徴は、三浦綾子自身が通ってきた人生の体験から得た真実に裏打ちされた文学だということです。そしてその最も中心にあるのは、『道ありき』に書かれた、絶望から光へと導かれていった体験、 …